《親孝行》

【引用】
「人間の親にとって、育児は本質的に無理な負担なのである。」
「東洋の親孝行の思想はさらに露骨であって、無償では子を育てる気になれない親の気持ちがのぞいている。この思想は親の負担を子に移すことによって軽減しようとするものだが、」
(ものぐさ精神分析、何のために親は子を育てるか、p150、p151)

【解説】
育児思想が、人類の基本的な思想であることを論じ、本質的に無理がある育児のために、いろいろな幻想が発明されて、その一つとして、親孝行の思想とは何かを論じた箇所である。親孝行の思想は、戦前は「海よりも深く、山よりも高い」と、神聖視されていた。戦後、その神聖視は薄れたといっても、まだ根強く存在している。親孝行の思想に苦しめられている人には、その聖なるものの幻想をはがすことによって、この幻想から解放されるのである。唯幻論の切れのよさの一つは、このような、物事の幻想性の暴露にあるだろう。

【蛇足】
本旨は、親孝行の幻想性の暴露ではなく、育児が本質的に無理な負担であるということを論じ、そのことを納得したときに、自分なりの育児の意義を見出すことができるようになるということだと思われる。

【つっこみ】
親孝行の秘密を、言っちゃいけない約束じゃなかったですか?それを言っちゃぁ、おしまいよ!神聖視しているものの幻想をはがすと、怒っちゃう人もいるでしょうねぇ。